データ連携とは、社内に散在する複数のシステムやアプリケーションの間でデータをつなぎ、共有・活用できる状態にする仕組みです。販売、生産、会計など業務ごとにシステムが分かれている企業では、データが部門単位で孤立し、分析や意思決定に活かしきれない場面が生まれがちです。
本記事では、データ連携の基礎知識から代表的な手法、導入で得られる効果、思うように進まないときの対処法までを整理して解説します。自社のデータ活用を前へ進めたいと考えている方は、参考にしてください。
データ連携とは、異なるシステムやアプリケーションの間でデータを受け渡し、組み合わせて活用できるようにする取り組みを指します。企業のデータは、販売管理、生産管理、会計、CRMなど用途ごとのシステムに分かれて保存されるのが一般的で、放っておくと部門単位でデータが孤立してしまいます。データ連携はこのように分断されたデータをつなぎ直し、全社で使える資産へ変えるための土台です。
なお、似た言葉にシステム連携があります。システム連携が処理や機能をつなぐことを指すのに対し、データ連携は情報の共有と活用に焦点を当てた言葉です。
また、データ連携の重要性は、DXやAI活用の広がりとともに高まっています。分析やAIの精度は入力されるデータの量と質に左右されるため、まずデータがつながっている状態をつくることが、あらゆるデータ活用の出発点です。
データ連携が実現すると、日々の業務とデータ活用の両面で変化が生まれます。ここでは、代表的な3つの効果を紹介します。
データ連携によって、部門をまたいでデータを掛け合わせることができます。たとえば販売データと生産データを組み合わせれば、売れ行きに応じた生産計画の調整が可能になり、顧客データと問い合わせ履歴をつなげば、顧客ごとの状況に合わせた提案を組み立てられます。
単独のシステムに閉じたデータでは見えなかった相関や傾向も、複数のデータを重ねることで浮かび上がってきます。横断的な分析は経営判断の精度を高めるだけでなく、新しいサービスや改善施策のヒントを得る場としても有効です。
システム間の数字のズレは、データが個別に管理されている企業で起こりがちな問題です。たとえば在庫管理システムと販売管理システムで在庫数が食い違うと、在庫があるのに品切れと判断したり、欠品に気づかず受注を続けたりする事態を招きかねません。
データ連携により最新のデータが各システムへ自動で反映されれば、どの画面から確認しても同じ数字を参照できる状態を保てます。数字への信頼が担保されることで、確認や突き合わせの手間が減り、データにもとづく判断を安心して進められるようになります。
データを連携させれば、データの転記や二重入力作業が発生しません。システムが分かれていると、同じ情報を複数の画面へ入力したり、CSVを出力して加工し直したりする作業が発生し、時間を奪うだけでなく入力ミスの温床にもなります。
データ連携で受け渡しが自動化されれば、人手を介する箇所が減り、ミスの発生源そのものを断てます。空いた時間を分析や改善といった付加価値の高い業務に振り向けられる点も、見逃せない効果です。
データ連携の手法にはいくつかの選択肢があり、データ量や求めるリアルタイム性によって向き不向きが分かれます。ここでは、代表的な5つの手法を紹介します。
| 手法 | 特徴 | 向いているケース |
|---|---|---|
| ETLツール | データを抽出・変換し、DWHなどへまとめて格納 | 大量データの集約・分析基盤の構築 |
| EAIツール | 複数システムをリアルタイムに近い形で相互接続 | 業務システム間の日常的なデータ同期 |
| API連携 | システム同士がAPIを介して直接通信 | クラウドサービス間の自動連携 |
| RPA | 画面操作を自動化してデータを転記 | APIのない既存システムとの連携 |
| ファイル連携 | CSVなどのファイルを介して受け渡し | 低コストで始めたい場合や一時的な移行 |
ETLツールは、抽出(Extract)・変換(Transform)・格納(Load)の頭文字をとった名称のとおり、各システムからデータを取り出し、形式をそろえてデータウェアハウスなどへ書き出すツールです。夜間バッチなどで大量のデータをまとめて処理する方式が基本で、分析基盤の構築に広く使われています。
リアルタイム性は高くない一方、大量データの扱いに強く、処理の確実性に優れる点が持ち味です。売上の集計や複数拠点のデータ統合など、定期的にデータを集約する用途に適しています。
EAIツールは、社内のさまざまなアプリケーションを相互につなぎ、リアルタイムに近いデータ連携を実現するツールです。アダプターと呼ばれる接続機能を介して基幹システムからクラウドサービスまで幅広く接続でき、フォーマット変換や振り分けの機能も備えています。
近年は、クラウド上で同様の連携をかなえるiPaaSと呼ばれるサービスも広がってきました。受注から出荷、請求までのように、複数システムをまたぐ業務の流れを自動化したい場合に力を発揮します。
API連携は、システム同士がAPIと呼ばれる接続口を通じて直接データをやり取りする方式です。必要なデータだけを選んで取得でき、リアルタイム性にも優れるため、クラウドサービスが主流となった現在のデータ連携で中心的な位置を占めています。
一方で、実装にはAPIの仕様調査やプログラミングの知識が必要で、提供元の仕様変更に追従する保守作業も発生します。開発体制を確保できるかどうかが、採用時の判断材料です。
RPAは、人がおこなう画面操作をソフトウェアロボットに覚えさせ、転記や登録の作業を自動化する技術です。既存システムに手を加えずに導入でき、APIが用意されていない古いシステムからデータを取り出す手段としても使えます。
ただし、画面のレイアウトが変わると動作が止まることがあり、継続的なメンテナンスを前提に運用する必要があります。大量データの処理や複雑な変換には向かないため、ほかの手法と組み合わせて使うのが現実的です。
ファイル連携は、CSVなどのファイルを介してデータを受け渡す、もっともシンプルな方式です。ほとんどのシステムが入出力に対応しており、専門知識がなくても始められるため、連携の第一歩やスポットのデータ移行に向いています。
また、システムの内部に手を入れずに済むことから、基幹システムと周辺システムを緩やかにつなぎたい場合にも役立ちます。自動化やリアルタイム性は期待できないため、件数や頻度が増えてきた段階でツールへの移行を検討してみましょう。
データ連携は、必要性を感じていても実際には進めきれない企業が多い領域です。ここでは、壁になりやすい3つの問題と対処法を解説します。
データ形式が揃わないと、データの連携がうまくいきません。システムごとに項目名や日付の書式、コード体系が異なるうえ、「株式会社」と「(株)」のような表記ゆれも混在するため、そのままつないでも使えるデータにはなりません。
解決には変換ルールの設計とデータクレンジングが必要ですが、対象が多いほど設計と検証に工数がかかり、データの意味を理解した担当者を巻き込む手間も発生します。すべてを一度に整えようとせず、活用目的に直結するデータから優先順位をつけて段階的に整備することが、負担を抑えながら前へ進める条件です。
レガシーシステムとの接続は、長くシステムを使い続けてきた製造業などの企業ほど直面しやすい壁です。古い基幹システムにはAPIがなく、データ形式も独自仕様である場合が多いため、最新のクラウドサービスと直接つなぐことができません。
対処としては、ファイル連携やRPAで迂回する方法と、システム改修でAPIを整備する方法があり、前者は手軽な半面で処理の安定性に限界が残り、後者は改修コストと期間の負担が重くなります。連携したいデータの重要度と更新頻度を見極めて方式を使い分ける設計が、コストを抑えて実現するための条件といえます。
連携の仕組みの属人化も問題です。連携が増えるほど構成は複雑になり、担当者の異動や退職をきっかけに、誰も中身を把握していないブラックボックスと化す事態が起こり得ます。
予防には、設定内容や処理フローのドキュメント整備と、複数人で運用できる体制づくりが必要で、継続的なメンテナンスの手間も織り込んでおかなければなりません。つくって終わりにせず、監視やエラー対応まで含めた運用設計を導入時から組み込んでおくことが、連携を長く機能させる条件です。
データ連携を軌道に乗せるには、ツール選定から入るのではなく、目的を起点に進める順序が重要です。ここでは、押さえておきたい3つのステップを紹介します。
データ連携のツールを選ぶには、データ連携ツールの目的と対象のデータを絞り込みしましょう。「在庫の食い違いをなくしたい」「販売データを需要予測に使いたい」のように、解決したい課題を具体的に定めることで、つなぐべきシステムとデータの範囲が自然と定まります。
逆に、目的が曖昧なまま全社のデータをつなごうとすると、範囲が広がりすぎて頓挫しやすくなります。まずは効果を実感しやすい領域に絞り、小さく始めて広げていく進め方がおすすめです。
データ連携をする前に、データの棚卸しや変換ルールについても検討しておきましょう。重複や欠損、表記ゆれの状況を棚卸しの段階で確認しておけば、あとから手戻りが発生するリスクを減らせます。
次に取り組むのは、異なる形式のデータを共通のかたちへそろえる変換ルールの設計です。日付や住所の書式、コード体系の対応づけなどを明文化しておくことで連携後のデータ品質が安定し、分析にそのまま使える状態を保てます。
データ連携ツールを選ぶ際は、連携方式を選んでから、運用体制まで構築しておきましょう。リアルタイム性が必要ならEAIやAPI連携、大量データの集約ならETLというように、要件に照らして手法を選び、必要に応じて複数を組み合わせます。
あわせて、導入後の運用体制も設計段階で決めておきましょう。エラー発生時の対応手順、監視の仕組み、ドキュメントの管理方法まで整えてこそ、データ連携が継続的な効率化につながるでしょう。
ブライセンのデータエンジニアリングサービスは、システムごとに分断されたデータをつなぎ、業務や分析で本当に使えるデータ基盤へと育てる支援をおこなうサービスです。
弊社は、データの収集・蓄積にとどまらず、目的起点のデータ設計から基盤構築、運用・改善までを一貫して支援しています。日本とベトナムの開発体制により品質とコストの両立を図り、自動車業界をはじめ、製造業やプラント分野の企業様を支えてきた実績があります。
データを連携したいものの、形式の不統一やレガシーシステムの壁で足踏みしているという方は、お気軽にご相談ください。
データ連携は、システムごとに散らばるデータをつなぎ、組み合わせ分析や業務効率化をかなえる取り組みです。ETLやEAI、API連携など手法は複数あり、データ量やリアルタイム性の要件に応じた使い分けが必要です。
一方で、データ形式の不統一やレガシーシステムの存在、運用の属人化といった壁もあり、ツールを導入するだけでは解決できません。目的を起点に対象を絞り、棚卸しと変換ルールの設計を経て方式を選ぶ順序を踏むことで、失敗のリスクを大きく減らせます。
つながったデータは、分析やAI活用というその先の価値創出への入口です。まずは自社のデータがどこに、どのような状態であるのかを見つめ直すところから始めてみましょう。